~初編~

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夜になった 今日はよりにもよって新八が泊まると言い出した。仕方ない こう言う日もあっていいだろ これで最後だしな 「銀さん、寝ますよ?」 「ちょっと呑んでから…」 「じゃあ銀ちゃんが寝るまで寝ないアル!」 今日、2人はなんとしてでも俺と寝ようとしていた 今日は少しだけにしておくか 俺は缶ビール1個だけにしておいた 「先行ってるヨ!」 「早く来てくださいね!」 2人はトタトタと俺の寝室に向かう あの背中を見るのも最後だ どれもこれもが最後だったものに変わっていく。洗面所でチャックを開けた ドス黒い文様 もう首の下まで届いていた 今は冬。寒いから着込んでいると言う理由で隠せているので、あの2人にはバレていない 「わんっ!」 ビックリして後ろを向くと、定春が尻尾を振って待っていた 早く来いよ、とでも言いたげにもう一度吠えた。定春はこちらに近付いてグイグイと俺の服を引っ張る 業を1人で背負うな そう言っているような気がした …あいつらに背負わせちゃいけねぇ 「…内緒だかんな」 そう言って俺はギュッと定春を抱き締めた いつもは噛み付いてくるが、今日は噛み付いてこなかった ジワリと目元が熱くなる 駄目だ。まだ、耐えろ…!! そう自分に言い聞かせた 何度も何度も何度も…… そうやって今日まで何度、自分を殺してきただろうか 朝日が昇る前に起きた 両側の2人はぐっすりと寝ていた 最後にお前らの寝顔見れて良かったよ 俺は2人を起こさないようにして、布団の側に紙を置いた 『行ってくる いい子で待ってろ』 2人には迷惑かけちまったな そう思った瞬間に、ポロリと涙が俺の膝の上に落ちた 「ッ!…ッ……ウッ…」 ボロボロボロボロと 涙が止まらない 声を出さずに泣き叫ぶ ごめんな ごめんな ごめんな どんな事に対して謝っているかわからないけれど、何度謝っても、俺の涙は枯れることはなかった もう会えないと分かっていたから
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