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伊瀬君がお昼から戻って来た。
『伊瀬君、はいコレ。』
『?なんすか?』
『長峰さんから。』
『げ………うわ、またやり直しだ……』
見積書には修正箇所が沢山赤マルされてて
見るからにめんどくさそう。
でもダメ出ししたわりには汚ない字で注釈を入れてくれてるからデータは引っ張りやすい。
これなら数字が苦手な伊瀬君でもなんとかなりそう。
『じゃ、頑張ってね。』
『はい……』
私も自分の仕事に戻った。
定時も過ぎて、今日の仕事も一通り終わった。
うーん、肩凝ったぁ……… ん?
首を回してると、お昼から同じ姿勢で頭を抱えてる伊瀬君が目に入った。
『えッ!?伊瀬君!大丈夫!?』
『どうしても数字合わなくて…なんでだ…』
恐る恐るパソコンを覗いた。
『だから、ここの数字!
前比400%になってるからでしょ。』
『え?アッ!ほんとだ!』
大丈夫か?この子…
『それにここの入荷数おかしい。
前年とその前のデータも参考にして……』
『なるほど!』
なるほどって…
『ここに長嶺さんがちゃんと前年のデータ確認って書いてくれてるじゃん!』
注釈をトンッと指さした。
伊瀬君が不思議そうな顔で私を見上げた。
『のじ先輩…』
『なに?』
『長嶺先輩の字……読めるんですか…?』
え?
あ。そっか…
『読めないよね……普通……
気付かなくてごめんね。』
長峰さんの悪筆は有名で
読めるのはこのフロアでは私だけ。
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