前途多難

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『こんな短時間で よく見つけてこれたね。』 『結城さんのヒントのお陰です。』 『大変だっただろう?』 『とても。』 結城さんは嬉しそうに笑った。 『実は今日はコンセプトの変更を申し入れるつもりだったんだけど… まさかこう来るとはね。 恐れ入ったよ。』 関君が作ったラフ案は 20年前に結城さんが作り その後親友に盗用されて世に出たCMの 20年後のアンサーストーリーだった。 『このまま進めてもよろしいですか?』 結城さんは笑顔で、右手を差し出して 『最後に、いい仕事が出来そうだよ。 ありがとう、日向君。』 固く握手を交わした。 会議室に戻る途中で 『結城さん、この前は私は 自分にはライバルは居ないと言いましたよね。』 『ああ。』 『あれは嘘です。 ……と言うか、どこかで認めたくない自分が居ました。 そのCMを見つけてきたのは 私のライバルでした。』 『……そうか。 君には、僕の様にならないように そのライバルをずっと大切にして欲しいな。』 『はい。』 この結城さんの言葉をずっと覚えていようと思った。
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