会社の問題児

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『また残業かよ。』 『ひえっ……な、長峰さん……』 『お、長峰おつかれさん!』 『すげーな、コンペ獲るなんて。』 男性社員が労っても 『当然だろ。 獲るために準備してたんだから。』 この人には謙遜とかないんだよねー。 こっそり気づかれないように見積書を伊瀬君に手渡した。 『それより伊瀬!』 『はい!』 『見積書できたのかよ。』 『あ、出来ました!』 『見してみ。』 長峰さんが出来上がりたての見積書に目を通す。 『これ、お前ひとりでやったん?』 書類から目をそらさずに、聞いてきた。 『あ、それはの………』 ボスッ 伊瀬君の背中を軽く叩いた 『?』 言わなくていいから! ってジェスチャーして首を横に振る。 せっかく伊瀬君が頑張ったんだし 憧れの先輩から誉めてもらった方がやる気に繋がるよね。 『ひ、ひとりでやりました………』 『………ふーん。 やれば出来んなら最初からやれよ。』 『あ……はい。』 えー…… 鬼だ。 この男は鬼だぁ! 全然いい先輩じゃない! 『おつかれさん。飯でも食いに行くか。』 『えッ』 『腹減ってんだろ。 珍しく頭使ったんだから。 見積り、良くできました。』 長峰さんは自分より少し背の高い伊瀬君の頭をガシガシ撫でた。 『……ながみねせんぱーい…………好きっす!』 『キモい。つか、俺が腹減ってんの。 お前はついで!』 『うぅ……ついででも嬉しいです……』 『早く顔洗ってこいよ。置いてくぞ。』 『はい!』 伊瀬君がなんか女の子走りでフロアから出ていった。 『のじも行く?』 『え?いや……あの…私はまだ仕事が…』 『どーせ伊瀬のめんどう見てたんだろ?』 『………み、見てませんよ。』 『嘘つけ。 俺の字、正確に読めるのお前だけだろ。』 『じ、自覚してんなら直して下さいよ!』 『なおんねーよ。イマサラ。』 『ペン字練習帳でもやってください! って言うか今までどうやって来たんですか! 受験とか!』 『は~?マークシートだろ。だいたい。』 ですよねー……
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