雪解け

2/17
852人が本棚に入れています
本棚に追加
/479ページ
『あい、大丈夫?』 恐る恐るドアを開けると、日向さんが買い物袋を持って来てくれた。 『もう大丈夫です。すみません… ご迷惑をおかけして……』 『そんな事気にしなくていいよ その様子だと、まだ何も食べてないよね? 適当に作るから、その間お風呂でも入ってきな?』 『えっ…日向さんが料理?』 『意外?これでもずっと自炊してたし。 案外何でも作れるよ? 家事も結構好きな方だし。』 わー。これ以上スペック上げるのやめて。 死にたくなる。 『でも……』 『一緒に入る?』 袋から食材を取り出しながら 少し意地悪な顔で笑った。 『だ、ダメです!絶対に!ひとりで入ります!』 『ごゆっくり。』 着替えをかき集めて、お風呂場に直行した。 脱衣場の鏡をみて愕然。 思ってた以上に酷い顔をした私が映ってた。 お風呂から出ると、美味しそうな夕食がちゃんと出来上がってた。 『本当に何でも出来るんですね…』 『料理はレシピ通りにやれば失敗しないよ』 ニコニコとお茶碗を渡してくれた。 レシピ通り……か。 それが出来ないから失敗は生まれるんだけど… 出来る人には出来ない人の事は理解出来ないんだよね。 『日向さんの苦手な事って何ですか?』 ご飯を食べながら、聞いた。 『苦手な事……うーん……』 『苦手な動物とか!』 『動物………』 『……虫とかは?』 『蚊とか蠅とかゴキブリは嫌いだね。』 うん、そんなの好きな人居ないよ。 弱点は見付からなかった。 食事を終えて、お皿を洗ってると 『この先の撮影は参加しなくて大丈夫だよ』 『えっ……』 『もともと、あいは事務として参加してるんだから。 無理をする必要はない。』 サラッと言われた。 『……すみません。中途半端な事して…』 『いや。俺がもっと気を付けておくべきだった。 ごめんね。』 『日向さんの落ち度は何もありません! これは私自身の問題ですから……』 あ、嫌な言い方……… 日向さんはお皿を棚に戻して こっちを振り返った。 『今日、泊まっていい?』 『もちろん!』 『じゃ、俺もお風呂借りるね。』 私の頭をポンポン撫でると、お風呂場に行ってしまった。 なんでこんな言い方しか出来ないんだろう。
/479ページ

最初のコメントを投稿しよう!