雪解け

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『あい、まだ起きてる?』 『はい。』 『この仕事終わったら、話したいことがあるって言ったの覚えてる?』 『覚えてますよ。』 『今言ってもいいかな?』 『………はい』 日向さんが起き上がったので 私も体を起こした。 『そろそろ、結婚しない?俺達。』 てっきりお見合いの話かと思ってた私は しばらく言葉の意味を理解するのに時間がかかった。 『やっぱり指輪がないと駄目だよね。 ごめん。』 『………はっ!ち、違います、違います! ただ……嬉しすぎて脳ミソが少し死んだというか……』 『えっ?死んだ? やっぱり今度ちゃんと仕切り直すから 今日のは忘れて!』 『わ、忘れるなんて出来ませんから! 出来れば録音したいくらい……』 『自分でも…よく分からないけど 多分焦ってるんだ。今は…………』 『焦る………? 日向さんも焦ることあるんですね。』 『うん……こんなに焦ったの初めてかも。 ごめん、寝よっか。』 再び横になり、天井を眺めて考えた。 プロポーズは、勿論嬉しかった。 けど、その前の日向さんの言ってた事。 私が居なくても、営業の人達と関さんが居れば大丈夫って言葉。 半分は私を心配して言ってくれた言葉なんだろうけど もう半分は日向さんの本心だと思った。 私は仕事でも、日向さんの力になりたかった 一番の味方になりたかった けど… 日向さんはそんな事、私に求めて無かったんだね。 それが少しだけ悲しかった。
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