雪解け

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『長峰さん、今日はあい……… いや、野島さんは来ないんですか?』 監督自ら出演者に演技指導をしてる時 助監督の鈴木が声をかけてきた。 わざわざ苗字で言い直すあたり 少し癇に障る。 『……お陰様で野島は体調を崩してまして 理由はよく知りませんけど。』 『あちゃー。 それってやっぱり俺のせいっすよね?』 だから知らねって。 『…鈴木さんはウチの野島とどういったご関係なんですか?』 『まぁ、平たく言えば元カレですねー。』 飄々としてる。 『ふーん。見ただけで吐き気がする元カレさんなんすか。鈴木さんは。 なにやらかしてくれたんすかぁ?』 『てっきり長峰さんがあいの今の彼氏なのかと思ったけど… 俺の事知らないって事は違うんだー。』 お互い無言で睨んだ。 けど思ってる事は同じ。 コイツ、ムカつく。 『ふぅ…せっかく会えたし 一言謝罪だけはしたかったんだけどなぁ…』 沈黙を破った鈴木の様子から その言葉は本物な気がした。 『後悔すんなら、謝らなくちゃいけないような事、最初からすんなよ。』 『だよねー。 謝って許して貰おうなんて思ってないけど。』 『要するに自己満足か。』 『きっびしー。 ねえ、長峰さんからあいに伝言お願いしてもいい?』 『は?やだよ。なんで俺が。』 『冷たッ!』 『本気で謝る気があるなら土下座でもなんでもして直接謝罪すんのが筋じゃねーの? それが出来ねーなら 今後一切関わるべきじゃない。 と、俺は思うけど。』 『そう……だよね。』 鈴木はそれ以上は何も言わなかった。 チャラチャラしてるけど こいつは案外……… まぁ、全部はのじ次第か。
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