すれ違い

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部長室のドアをノックした。 『あれ?あい? 随分早いね。おはよう。』 日向さんの笑顔を見て、 嬉しくて なんだか泣きそうになった。 日向さんの笑顔にキュンとしてると 『昨日は楽しかった?』 と、すぐに現実に引き戻された。 『そ、それなりに!』 『そっか。いいなぁ。 俺も行きたかったよ。』 『今度は一緒に行きましょう! 関さんのお宅はホントに広くて、綺麗で! しかもスーパー家政婦の佐々木が居て……』 堰を切った様に、ペラペラと話が止まらない。 日向さんは笑顔で聞いてくれてるけど 話さなきゃいけないことは 関さんの家でも佐々木でも無くて…… 私が嘘をついてしまったこと。 どうやって切りだそう…… 『佐々木さんかぁ…俺も会ってみたい。』 ん? 『日向さん?』 『ん?』 『声……かすれてません?』 『え?そう?』 じっと顔を見つめた。 なんか……目が……熱っぽい気がする…… それを感じ取ったのか 日向さんはパッと顔を反らした。 『日向さん、熱ありますね?』 『はは…ないよ?』 『私の目は誤魔化せませんよ! 待っててください、今体温計借りて……』 『大丈夫だって…!』 手を掴まれて、止められた。 日向さんの手…… 『あっつ!ほら、測るまでもありませんて!』 『熱なんてないよ!』 『測るのが嫌なら病院行きましょう!』 『………絶対やだ。』 プイッと顔を背けた。
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