甘いワナ

1/9

856人が本棚に入れています
本棚に追加
/479ページ

甘いワナ

土曜日だけど出勤して、リテイクした資料の最終チェック中。 『……はぁ~あ………』 『なんだよミネ。さっきからため息ばっか 幸せ逃げるぞ~?』 坂井さんが爽やかにからかう。 『こっちはこの後クライアントの接待なんだよ!』 『接待?ミネが?………………大丈夫?』 『知るか!…………はぁ……』 『長峰さん』 声をかけると、半分振り返った。 『プレゼン資料、問題ないと思います。 最終確認お願いします。』 『りょーかい。見とく。お疲れさん。』 『お先に失礼します。』 『お疲れ様。帰り気を付けて。』 『はい。坂井さんも。土曜日なんですから早くおうちに帰ってあげて下さいね。』 坂井さんと長峰さんを残して フロアを出た。 数日前、あの会議室での作戦会議の後 すぐに加納さんの仕事用アドレスに食事の誘いを送った。 ものの5分で返信が。 『勿論、行けます。(はーと)』 思わず、3人とも苦笑い。 エレベーターはすぐにやって来て 乗り込んでスマホを見た メールが1件。 「ごめん、やっぱり今週はそっちに行けそうにない。」 やっぱりね。 うん。 あのディナー券はこのために使われるべきなんだって事だよ。 日向さんは忙しい人だもん。 下手にチケット取れたとか言わなくて良かった。 私が勝手にやったことだし。 気を使わせたくないし。 仕方ない…… 仕方ない……んだけど…… 5階で扉が開いた。 『あれぇ?のじちゃん。 もしかして帰ろうとしてた?』 『関さん!お疲れ様です。』 『お疲れー。なんか元気ないね?』 『え?そうですか? 元気ありまくりですよ~♪』 スマホを鞄にしまって 笑顔を作った。 エレベーターが1階に到着した。 『……じゃ、行こっか!』 急に手を握られた 『え?あの?どこに……?』 『どこって。ご飯に。』 『えっ!?あの………ちょっと……?』 落ち込む暇もない。
/479ページ

最初のコメントを投稿しよう!

856人が本棚に入れています
本棚に追加