甘いワナ

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『長峰くん?何かあった?』 俺の視線が気になったのか 加納さんが後ろを振り返ろうとした 『!』 『綺麗な指ですね。』 指に触れると 加納さんの頬が赤くなった。 『この指輪は誰かからのプレゼントですか?』 『そ、それは……』 『妬けるな。』 我ながら寒気がする発言。 『な、長峰くんこそ! 付き合ってる子居るんでしょ?』 『俺ですか?居ませんよ。』 『ど、どうして?モテるでしょ?』 『まぁ、それなりに?』 『ふん。 あの野島って子も長峰くん狙いでしょう?』 のじ? あー…のじを急に連れてきたから やたらとホテルの食事にこだわってきたのか。 めんどくせ。 『野島はそういう対象じゃありませんよ。』 『そうよね。長峰くんとあの子じゃ 全然釣り合ってないもんね。』 嬉しそうに笑うと、ワインを飲んだ。 『……そうですね。俺の好みのタイプは…』 無言で視線を送ると 加納さんの目がキラキラと輝き出した。 『私も!長峰くんを初めてコンペで見た時から好きだなって思ってたの!』 『そうなんですか?でも加納さんにはお付き合いしてる方が居ますよね? 俺、聞きましたよ?』 レコーダーのスイッチを入れた。 『…………佐々木部長の事? ……………誰か漏らしたのね。まぁいいわ。』 加納さん本人から 人事部長の佐々木の名前が出た。 『佐々木とは向こうがしつこく言い寄ってきてるから相手してやってるだけ。 あなたが嫌ならすぐに切るわ! 私と付き合ってくれるなら、この先のコンペもあなたのところを推してあげられるし!』 『……………………』 『私はあなたと関わりが持ちたくて 佐々木を利用して広報部にわざわざ来たの! あなたに会うためなの!ほんとうよ?』 よくもこう、一人でペラペラと… 『じゃあ安齋さんの異動は加納さんと人事部長の力で…?』 『……仕方ないじゃない。 でも懲戒免職にしないであげたんだから 感謝して欲しいくらいよ。』 レコーダーのスイッチを切った。
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