バトル

5/6
851人が本棚に入れています
本棚に追加
/479ページ
『え、加納さんは本日はいらっしゃらないんですか?』 わざとらしく長峰さんが言った。 『申し訳ありません。 加納は別件でトラブルがありまして。 本日のミーティングは代理の者が進めます。』 佐野さんがお茶を配りながら言った。 ニコニコしてる顔を見て ホッとした。 『代理の方は…もしや…』 広報部の皆さんの表情がこの前と全然違う。 穏やかで生き生きしていた。 『失礼します。』 ノックをして入ってきたのは 『安齋さん!』 『お久しぶりです。長峰さん、関さん。 ………それと……』 安齋さんは何故か私の前に来た。 『初めまして、野島さんですよね? 私は安齋と申します。 佐野から逐一報告はもらってました。 本当に…ありがとうございました。』 『そ、そんな!私は何も………』 『このお礼は必ずします! なんでも言ってください。』 いや……ほんと……お礼なんて…… あ。 『じゃあ……ひとつだけ……』 『はい!』 『今日のプレゼン… 弊社の二人が寝ないで仕上げて来ました。 とてもいい出来だと確信してます! ……なので……』 これ以上のリテイクは…… 『大丈夫ですよ。』 察してくれたように、安齋さんが笑った。 『いいものを作りましょう。 ここに居る全員で!』 自然と皆がひとつにまとまり すんなりとOKがもらえて サクサクとミーティングは進んだ。 話が盛り上がり 結局ミーティングが終わったのは夕方で 仕事を掛け持ちしてる関さんは途中で別件に呼び出されて抜けた。 やっぱりリーダーってこういう存在なんだなぁ。 欠けたピースの中央に居るべき人。 この人が居ないと横のピースも縦のピースも 居場所が分からなくて いつまでも完成しない。 その事をプレゼンからの帰りの電車の中で長峰さんに言ったら 以外にも真剣に聞いてくれて、一言。 『そうだな。』 『?』 あれ?変なの。 いつもなら 『合わないピースでも 無理矢理くっつけて完成させんだよ!』 くらい言いそうなのに。 長峰さんが黙ってしまったので 私も黙って電車に揺られた。
/479ページ

最初のコメントを投稿しよう!