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『あれー?安田くんは亜里沙狙いなの?』
それを見てた受付の女の先輩のひとりが
面白そうに笑った。
『そうだよー。
俺、ずーっと前から亜里沙ちゃんの笑顔に惚れてたんだから!』
安田さん、だいぶ酒入ってんな。
『だってさ♪どうするの?亜里沙。』
別の女の先輩が意地悪そうな顔で言った。
『え……いえ、どうもこうも……
いきなり言われても……』
『じゃあさ!二次会は俺と二人で行こうよ!
それで俺の事よく知ってほしい!』
『そ、それは……』
『行ってあげなよー。』
『断ったら安田さん可哀想だよ?亜里沙ァ。』
『……で、でも………』
『あー。胸糞悪。』
『え?な、長峰?』
『貸せよ。』
受付の手から安田先輩のビールを抜き取った。
『な、長峰くん?』
とりあえず、それをイッキ飲み。
『お、おい!長峰!それ俺のビール』
『こー言うの。
今ではパワハラって言うんじゃないっすかねー?』
安田先輩と受付の先輩達の前に空いたグラスを置いた。
『えっ……』
『私達は別に……』
『ま、まぁまぁ。長峰。安田も酔ってるし
勢いで言っちゃっただけだから。
ほら、空気読んで……
ごめんねー?亜里沙ちゃん。』
もうひとりの営業の田嶋さんがなだめてきた。
『俺、空気読んでって言葉嫌いなんすよね。』
『お前、俺に喧嘩うってんのか?』
『あんた、好きな女に告るのに
酒と周りの煽りがねーと出来ねーのかよ。
情け無さすぎだな。』
しーん。と静まり返る個室。
『お、おい!長峰!お前先輩に向かって…』
『あ、すんません。
俺もビールイッキしたんで酔ってつい本音が
でも大人な皆さんなら
空気読んでくれるんすよね?』
『な、長峰……その辺で……』
受付が青い顔で止めてきた。
『あ、やべ。
酔って吐きそうなんで
俺とコイツはもう帰ります。』
受付の腕を引っ張った。
『えッ?』
『お、おい!長峰!』
『長峰くん!』
あ、そっか。
言い忘れた。
『ごちそう様でした。セ、ン、パ、イ☆』
挨拶は営業の基本だからな。
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