前途多難

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D社の広報担当者は結城さんと言う人で 来年定年なさるという大ベテラン。 実質今回の仕事が最後となる。 車のCMのコンセプトは 『受け継がれる信頼』だそうで。 これをふまえてCMの構成を考える ……そうなんだけど。 『このコンセプト渡されて 分かりましたー。って返事したら この結城さん。 急に態度変わってさ。』 『え?どうしてですか?』 『お前がチャラついてるから ムカついたんじゃねーの?』 『ミネっちひどい。』 『理由はよくわからないけど。 君たちも同じか………って呟いてたよね。』 君たちも? 同じ? 誰と比べてるの? もう一度コンセプトの書かれた紙を見つめた。 『まぁ…考えても分からないし。 とりあえず長峰君が集めてくれたCM見ながら構成を考えよう。』 日向さんが仕切り直した。 結城さんか……どんな人なんだろう。 CMとは言え、見るだけでもかなりの時間を費やされた。 『あい、もう遅いから。 先に帰りな?』 『え?でも…皆さんは…』 『俺達もこれ見終わったら帰るから。』 まだ半分近く残ってるのに… 私だけ帰るのは… 頷かない私を見て、日向さんが少し困った様に笑ってる。 『いーから。帰れよ。 明日寝坊すんなよー。』 長峰さんにぶっきらぼうに言われた。 『……分かりました。お先に失礼します。』 お辞儀をして、会議室を出た。 なんか、私だけ戦力外。 まあ私の仕事はスケジュール調整と見積り作成とかだから。 まだ仕事は無いんだけど…… 悶々としながら道を歩いてると 『野島さん!』 『……え?あ、佐野さん!』 偶然、S社の佐野さんが向こうの歩道で手を振っていた。
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