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偶然の再会
持ち込んだラフ案にゴーサインが出てから
急に忙しくなった。
CM撮影スケジュール、概算見積もり
場所を押さえて……それから、それから……
始めての事だらけで、長峰さんからはダメ出しの嵐。
それでもようやくまとまってきて
日向さんにチェックしてもらいに部長室のドアを叩いた。
『あいの成長はめざましいね。』
見積もり書、諸々を見ながら日向さんが言った。
『ほんとですか!?』
少しは日向さんの役に立ってきた?
『長峰君のお陰かな。』
『半分はそうですね♪』
『……半分か。正直だね。』
もう半分は、愛のチカラ☆なんちゃって。
『あいには、俺より
長峰君の方が合ってるのかもね。』
思いもよらない言葉に
頭の中が無音になった。
『そんなこと……絶対ない……です。』
気付いたら、目の端から水が流れて
頬を伝って床に落ちた。
『ごめん。意地悪言った。』
日向さんは立ち上がると、私を引き寄せて
優しく抱き締めてくれた。
『この仕事が終わったら
話したいことがあるんだ。聞いてくれる?』
話したいことって?
お見合いする事?
まさか、お別れじゃないよね?
言いたいことは山ほどあったけど
大事なこの時期に日向さんを困らせたくなくて
わだかまりは全部飲み込んで
ゆっくり日向さんの腕の中で頷いた。
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