すれ違い

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すれ違い

髪型オッケー メイクオッケー 鞄の中には、プレゼントをしっかり入れて。 うん。 大丈夫! そう言い聞かせて、家を出た。 『おはよ!のじ。』 『おはよう!』 亜里沙がいつも通り、受付で迎えてくれた。 『髪型かわいく出来たね。』 『亜里沙みたいに上手くないけど。 頑張ってみました!』 『きっと日向さんも喜ぶよ。』 『ありがとう。』 いちばん乗りでフロアについて いつも通り給湯室でお湯を沸かしてると 『………野島さん。』 『あ、吾妻さん。具合は大丈夫ですか?』 青白い顔をした吾妻さんが 申し訳無さそうに入ってきた。 『昨日は……申し訳ありませんでした!』 いきなり最敬礼のお辞儀で謝罪を受けて かなりビックリした。 『えっと、あの、とりあえず顔を上げて下さい。お願いします………』 吾妻さんは恐る恐る、顔を上げた。 『僕の言ったことは冗談なんで… 全部忘れてください。』 『いえ。それは出来ません。』 キッパリ断った。 『吾妻さんが言ってくれなかったら 私はずっと自分の行動の浅はかさとか 無神経さに気付けませんでした…… むしろ、ハッキリ言ってくれて ありがとうございます』 吾妻さんはビックリしてる。 『それに……ホッとしました。』 『え?』 『日向さんの周りには、今はちゃんと味方が居るって。』 『……それって…』 『吾妻さんの事です。 あ、勿論。私だって味方の一員ですよ! ……あんまり戦力になってないかもですけど…』 最後はモゴモゴしちゃった。 『そういう所……』 『え?』 『きっと、日向部長は野島さんのそういう所に癒されてるんですね。』 真顔で言われると、すごく恥ずかしいんだが。 吾妻さんって、案外本音しか言わないな。 それがかえって安心できる。 嘘もお世辞もないから。 『さっき、日向部長出勤してました。』 『え?いつもより早い……』 『……まだあんまり人も来てないし… 少しは話す時間あるかも知れませんよ。』 視線を外しつつ、吾妻さんがボソッと言った。 それがなんか可愛くて、思わずクスッと笑ってしまった。 丁度やかんのお湯が沸き、吾妻さんがガスを止めた。 『今日のお茶係は僕がやります。 野島さんはこのUSBを至急部長に届けてくれませんか?』 ポケットからUSBを取り出した。 『承知しました。』 ありがとう、吾妻さん。
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