あいと藍

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あいと藍

壁の時計を見る。 携帯を見る。 ため息をつく。 夕方を過ぎたあたりから、のじはこのローテーションを 幾度となく繰り返している。 『はぁ…』 通算50回目の(適当)ため息をカウントしたところで さすがにイラっとした。 『いい加減電話しろよ!』 のじがビクッと揺れた。 『な、何ですか、長峰さん…急に。』 『気になるなら部長に電話しろよッつってんだよ!』 『だってまだプレゼン中かも?』 こっちがため息でるわ。 『部長はプレゼン中もマナーモードにしないような勇者かよ? つーか今何時だよ?もう20時だぞ? いつまでプレゼンしてんだよ!なげーよ!』 『そ…そっか!』 嬉しそうな顔しやがって。 『…どーせ打ち上げでもやってんだよ。 お前に連絡するのも忘れるくらい盛り上がってんのかなー。』 『電話してみます!』 意を決した様子でスマホを持つと、フロアを出て行った。 相変わらず、よくわかんねー気の使い方するよな。 気になるならさっさと電話しろよ。 5分後、涙目でのじが戻ってきた。 『電話、繋がりません!』 なんだよ、お前ら。 『…仕方ねーな。水無瀬に聞いてみるか。』 俺がスマホに手をかけたとき 一本の外線がかかってきた。 珍しく残業していた美鈴が電話を取った。 『課長、大阪支社の小林部長からお電話です。』 大阪と聞きつけて、のじの目が光った(ように見えた) 『はい、お電話代わりました。課長の柴田です。 ………え!?日向部長が入院!?』 フロアがざわつく。 のじは真っ青な顔で、携帯を床に落とした。
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