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前途多難
プロジェクトチームの最初のお仕事は
本格的なミーティングの前の下準備として
日向さんと関さんがD社に出向き
基本的なコンセプトの確認…
の、はずだったんだけど。
『はぁあぁ…………』
貸しきってる会議室に戻って来た関さんからはでっかいため息。
『D社はどんな感じでした?』
『どうもこうも……むこうさんの担当のおじちゃんはものすごい圧で怖いし…
なんか嫌味ったらしいし……
ちょっと心折れたー。』
『まぁ…大手の会社ですし…
仕方ないんじゃないですか?』
担当者が男と聞いて
ホッとした。
S社の加納さんみたいな人だったら
一発で日向さんロックオンだったろうし。
『って……あれ?日向さんは?』
『あー、帰って来るなりロビーで菊川常務に呼び止められてたよ。』
『常務?』
どうしたんだろう?
ほどなくして日向さんも会議室に入ってきた。
会議室には
日向さん、関さん、営業部の吾妻さん
それと私。
『あれ?長峰君は?』
『昼過ぎから見てません。』
吾妻さんが淡々と答えた。
『初っぱなからサボりかー。
ミネっちもやるね~。』
『サボってねーよ!』
バタンッと音を立てて
長峰さんが入ってきた。
その手には大きめの段ボールの箱。
『ミネっち、それは?』
『過去のD社のCM。
ざっと20年分くらいかな。
どーせ、この分野は実績ゼロだからって
初回は門前払いだったんだろ?
だったら勉強するしか無いだろ。』
ドンッと箱を机に置いた。
『よくひとりでこんなに集めたね。』
日向さんが箱の中身を見て言った。
『鬼島部長が君を推薦した理由
よく分かった。』
『そりゃ、どーもッ……』
吾妻さんが既にプレイヤーをセットして
最初のCMの映像を再生した。
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