無地

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「・・・寒いんすけど」 「帰れば?」 「お前は?」 「まだここにいる」 「・・・はぁ」 レンが軽くため息をついてから意を決したように聞いてきた。 「なんでここにいんだよ。なんかあったんだろ?なんでなんも言わねーの。」 ヤバい。寒くてちょっとイラついてる。 これは真面目に答えねば。 自分でも良く分からないなりに一つずつ、真剣に考えて答える。 「なんでだろ?多分、レンが来ると思ったから。  来なかったらそれはそれで良かったんだけど、  来てくれて良かった。  なんかあったっちゃあったけど、  何もないっちゃぁなんもない。から、  何話せば良いか分かんなくて黙ってた。  それにレンがソワソワしてんのも面白くて」 「なんだそれ」 「久しぶりに会ったのに全然変わってなくて嬉しかった。」 「お前は昔以上にややこしいやつになったな」 「ハハっ、そうかも」 笑いながら答えた。その時始めて、頬が動いた感覚がした。 感覚が麻痺してたんじゃなくて、本当に、筋肉が動いてなかったんだなと思った。
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