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「悪いけど情けは無用。モカルちゃんへの投資代を差し引いても俺は勝てるからね」
机の脇にかけていた、クリーム色の取っ手付きの紙袋へ手を伸ばす。「上等だこの野郎」と正太郎の声が、「言ってくれるねー」と由実さんの声が聞こえた。
紙袋の中からビニール袋を取り出す。袋の中には大量の保冷剤と3つのカップが入っている。カップを取り出すと同時に、由実さんが口を開く。
「な、アイス!?」
俺は小さく口角を上げた。あんこを使った菓子は和菓子だけじゃないし、あんこの魅力を生かせるのはパンだけじゃない。
「この暑い夏に……!」
ドン、と拳で正太郎が机を叩く。そう、今年は歴史的な猛暑である。この天気を活かさないわけがない。正直2人のうちのどっちかはアイスを持ってくるかもしれないと不安だったが、見事に2人ともリニューアルオープンした山田屋に夢中だった。
ちなみに保冷剤を大量に入れているとはいえ、何故アイスが溶けていないのかというと、
「料理同好会だからって冷凍庫使ったんでしょ。いいなぁ!」
この由実さんの言葉が答えである。料理研究同好会副会長の権利をフルに活用した作戦だ。
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