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「ただいま部員募集中でーす。今なら家庭科室の使用権利もらえるよ」
「勧誘してんじゃねえ!」
正太郎の声を聞き、俺はさらに余裕の笑みを濃くする。ふふんと漫画みたいに鼻を鳴らした。
「さらに言うとこれは手作りの白あんアイス。小豆農家のばあちゃんから分けてもらった白あんを使い、自分で作ったものだから。つまりかかったコストは材料費のみ!」
「策士だ、課金の亡者という名の策士がいる!」
「てめぇおばあちゃん召喚すんのは卑怯だろうが!」
ブーイングすらも戦いの歓声に聞こえた。
「悪いけど、俺は戦いの数が違うんだよ」
立ち上がり、アイスのカップを配る。俺の態度に悪態をつきながらも、正太郎も由実さんもカップは素直に受け取った。家から持ってきたプラスチックのスプーンを手渡した時だった。
「つーか、俺たち以外の人とも戦ってんの? 今度紹介してくれよ」
僅かに俺の手が止まったことを、多分2人は気づいていない。スプーンを受け取りながら、正太郎は笑う。
「中々いないもんね、あんこでここまでバトルする人」
「な」
正太郎が由実さんにスプーンを手渡す。かしゃりとスプーンを包んでいるビニールの擦れる音がした。
制服のズボンを軽く握る。胸元に、ゆるやかな温かさが這い上がってきた。
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