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「くそうっ、お高い味がする……」
最初に感想を言ったのは由実さんだった。あんぱんを丁寧に両手で持つ彼女は悔しそうに、かつ美味しさに悶えつつ俯いた。
「なんかすごいもの食べてる感がすごい……よく分かんないけど美味しい……」
「食レポ下手すぎか」
苦笑いの正太郎の言葉に「くそう」と返事になってない返事が投げられる。椅子の背もたれに寄りかかって、正太郎も大きな口を開けて食べつづける。確かに思わず大口開けてしまうくらい、豊かな甘さがある。つぶあんの主力武器である豆の食感が、しっとりしたパン生地の舌触りにアクセントをつけていた。今日の戦いは出だしからレベルが高い。
「まぁ確かに美味しいね、これ。あんぱんっていうかあんこそのまま食ってる感じある。生地もしっとりしてるし」
「だろ? もう他のあんこなんか粘土にしか感じねえだろ?」
いやそれはない。むっと唇を少し曲げる。つぶあん派にとっては禁句だが、ちょっと癇に障った俺は、思った通りの感想を述べようと口を開く。
「まぁ、白あんだったらもっと美味しいと思うけど」
「はいでたよそれ! だからぁ、これは粒あんだからこそ美味いわけで……!」
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