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その刹那、ガタン、と言葉を遮るように音が鳴った。びっくりして小さく肩が跳ねる。びっくりさせてきたものの正体は、隣の由実さんが立ち上がった音だった。俺の方へ身を乗り出していた正太郎も驚いているのか、口を開けたまま停止している。
「ふっふっふ。よく言った中田くん。その言葉を待っていた! 私のターン!」
声は聞こえなかったが、正太郎の口が「まさか」と動いた。
由実さんがカバンからなにかを取り出す。そのまま机に置かれたそれは、パン屋の紙袋だった。見覚えのある色とデザイン。はっと速く息を吸う。紙袋には正太郎の持ってきた紙袋と同じく『山田屋』の文字があった。
「ゆーみんお前もか……!」
「こしあんの繁栄の為だよ、2人とも。ここで死んでもらおうか」
「唐突にラスボスみたいなこと言いだした……。え、でも由実さん今日遅刻してないよね?」
山田屋は改装を終え、今日の朝にリニューアルオープンした。つまり正太郎のように学校を遅刻して買いに行かなければ手に入らないし、前日にあらかじめ買っておくことも不可能である。
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