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「私は学校サボってまで行かないよ。山田屋の店長さんと昼休みに学校の校門前で待ち合わせして、届けてもらったの。仲良しだから、店長さんと私」
脳内に山田屋の女店長の顔が浮かぶ。言っては悪いが接客態度は無愛想そのもので、俺はその店長がレジにいると、心の奥で身構えてしまう。
「しかもちょっとおまけしてもらったんだよ? すごくない?」
「仲良しって、ちょっと怖いあのおばさん店長とかよ?」
「そう」
「由実さん無駄にコミュ力高すぎだよ」
俺がそう言うと、由実さんは大袈裟なくらい胸を張る。「需要の無え胸はってんじゃねえ」と正太郎がボソッと吐き捨てた。その後間髪いれずに「は?」と不機嫌そうな低い声がした。
由実さんは確かにスタイルがいい。背も高いし、本人の前では絶対に口に出さないが胸も大きい。クラスの男子の間でも結構人気だが、こういういやらしい話題を出すと正太郎が『何故か』不機嫌になる。彼の膨れっ面の理由を俺、というかクラスの大多数が気づいているが、口に出したりはしない。ただ、ニヤニヤと下世話な視線を向けたりはする。
由実さんのコミニュケーション能力の結晶とも言えるこしあんぱんは、安定の美味しさだった。正太郎が由実さんの額にデコピンをする。俺にデコピンするときは頭蓋骨が砕けそうなほど痛いのに、小さな音の優しいデコピンだった。
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