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常に羨望のまなざしが集まる部署の中でも やはり内野さんは特別な輝きを放つ存在だった。 そんなキャリア組と新人の私が 同じ社名を名乗って勤務していることは 今でもちょっと不思議に思っている。 彼がもし、ライバル企業から ヘッドハンティングをかけられ、移籍したら この会社は彼を放出しないために 長い長い交渉をしなければならないだろう。 そんな部署とは住む世界が違う……そう思いながら 私は自分の目の前にある問題に 日々頭を悩ませていた。 私の所属である国内営業二課。 ここでは他者と異なる個性を認めてくれる 許容の広さなど求められない。 朝、おはようございますと発言してから お先に失礼しますと言い終えるまでの時間 私は自分がまるで、一回り小さなサイズの服を むりやり着ているような気持ちで過ごしている。 そのきっかけは 入社して試用期間が過ぎた、ある日の事だった。 最年長の女性社員に 小さなことから不興を買って以来 彼女の担当する事務の仕事の合間を見ては 滅入るような会話を振られながら 地味に吊し上げられていた。
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