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なるべく消耗しないように なるべく彼女の不機嫌の標的にならないように そう思って働き続けることは 徐々に私から仕事に対する価値観や 本質を奪っていった。 そして、私の臆病になっていく様子に 大袈裟な構い方をする営業一課の男性社員がいた。 芹沢翔平。30歳。 国内営業一課のエース営業マンだ。 業務成績は人並み以上のやり手だけれど 海外組に対してアンチ精神を持っているらしく 「国内」を意識した会話を好む。 仕事の価値観の相違を個人の相違… 優劣に結び付けては、上下関係を決めたがる。 アルコールの席になると、自分語りが止まらない 少々厄介な人物でもあった。 私は入社直後から、芹沢になぜか気に入られ 「小嶋ちゃん」 「アリサちゃんて呼んでもいい?」 「アリサちゃん、休みの日は何してるの?」 私は戸惑いながら 適当な受け答えで凌いでいたけれど 「アリサちゃんは俺が落とす、手ぇ出すなよ!」 歓迎会の席で高らかに宣言する彼を 周りは面白がるだけ面白がり、冷やかし 彼の事をお気に入りにしていた先輩から 「入社して間もない新人がセリをたぶらかした」 「カラダで仕事する女」 「尻の軽い腰掛け社員」 などと、根拠のない噂を まるでネタのような笑いを装って     
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