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#1
窓を流れる景色をぼんやりと見つめている私がガラスに映る。
それを見ないように注意しながら
窓の外を見ている。
12月になり
年が終わっていく終末感なのか
自分を取り囲む空気が慌ただしくなる。
また今年も満ちていく。
ひと月後にはまた
新しく、欠けた年が始まる。
流れる景色を見つめながら私は
去年の、同じ季節を思い出していた。
『ちゃんと見ていれば分かるだろう』
私にそう言った、
あなたの強い瞳は美しかった。
美しいと思いながら
何故泣きたくなるのだろうと思った。
あなたが好き
あなたが好き
………あなたが、すき。
届かない思いが溶けた涙を
あの日のあなたは
あたたかい手でそっと拭った。
────私は、長い恋をしていた。
【声にならない言葉にも】
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