一、白き終焉

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 そして梅宮は、いつの間にか、俺の指添(さしぞえ)契約より前に随従として引き立てた、元傭兵の男女3人をずっと重用していることも作用して、“身分で差別せず平等に光を照らす慈悲深い女神”へと祭り上げられていった。  豊秋国では、帝の子が十八歳を超えると政治への参加を認められる。ただ、帝と大臣達の政治的な審議を聞いて勉強するといった体であり、意見を求められることはあっても形式上のものでしかない。  それでも、梅宮の指摘は的確であり、それ以上に控えめで慎重な態度が好感を呼び、少しずつ確実に信頼を勝ち得ていた。  と言っても、実のない賛辞や具体性の薄い追従が増え、応対がより面倒臭くなっただけのことだ。  そして高位の座席を急ごしらえされたようで心底居心地が悪く、逆に警戒心が刺激された。  日和見な俺はずっとその場凌ぎの生活を続けてきた。ここ数年ばかり改めたとしても、信頼関係などすぐには構築できない。手駒が少なく、集まる情報も動かせる範囲も少ない。  それが俺を、焦らせたのかもしれない。  いや、むしろ焦っていたのは敵方なのか。  事件が起きたのは、梅宮の身の回りで不慮の事故が増え、命の危険にさえ晒され始めた矢先だった。  春の到来を喜び豊作を願う国を挙げての重要な祭祀の最中、梅宮は毒を盛られてしまった。     
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