一、白き終焉

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 何となくとしか説明できないほど細微な異変に気付いたものの、それだけでは中断など申告できるものでなく、正に今飲もうとしている梅宮を前に小細工を仕掛ける余裕もなかった。  祭祀を手伝う人混みの中に暗殺者ではないかと目をつけていた人物を捉え、そちらは同僚に任せる。  俺は、儀礼の流れに組み込まれた動きであるかのように颯爽と、しかしかなり足早に梅宮へ近付いた。  恭しく跪き、流麗な動きを意識して梅宮の持つ杯を奪う。  この中に満ちている神酒をどうするのか、この一瞬の判断が梅宮の運命を決める。  間違えるわけにはいかない。  長引かせるわけにもいかない。  中身を捨てて証拠隠滅する手はなかった。  しかし、このままこれを残して毒を正しく検出できるものか判らない。俺が騒ぎ立てたとて、今直ぐに調べるかどうかも怪しい。  何がどうあっても、儀式を続行させてこれを梅宮に飲ませるわけには絶対にいかない。  俺は、自分の喉に、流し込んだ。    梅宮の真ん丸に見開いた瞳がそれでも美しく、見惚れていまい、そして。  身体中がねじり搾り上げられるような激痛に、意識を失った。      ※     
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