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俺は果たして、指添としての役目を全うできたのだろうか。暗闇の中、独り、問う。
契約を交わしたあの日から、梅宮の振る舞いは常に王たる威厳と慈愛に満ちていた。柔軟に弱さや欠点を認める悠然とした構えは、強さも優しさも内包していた。
神々しい輝きは4名の宮の中でも随一であり、俺は、梅宮のことも、梅宮に遣えることも、梅宮に遣える俺自身すらも、心から誇らしかった。
契約以前の(特に直前の)不遜な態度を深く反省し、ただ梅宮の為だけに精進してきた俺だが、しかし。
それとは全く別のところで、俺は、梅宮の笑顔が可愛いと思ってもいた。
部屋に戻って二人になったときの、気の抜けた安堵の笑顔を見るのが、好きだった。
俺の前で飾らずに振る舞ってくれる無邪気な仕草を、愛しいと感じた。
俺は、俺の誇りである女神然とした梅宮の、女神でない部分を独占することで、梅宮自身を独占しているような気になっていたのかもしれない。
つまり俺は、梅宮を、好きだったのかもしれない……。
梅宮は、指添の儀式以降、俺に触れぬように意識している様子だった。
それ以前もベタベタするような素振りは一切なかったが、指先が僅かに触れるようなことすらなくなってしまった。
それを淋しいと感じたのは、いつだったろうか。
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