一、白き終焉

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『明の指添(さしぞえ)よ。今、すべてから解放された。その目を開くが良い』  唐突に、知らぬ声が響いた。  声どころか、音を聞くのが久し振りだ。鼓膜の震えが心地よい。  体全体のだるさを感じながら、声に導かれるまま、瞼を開ける。  知らない部屋だった。  思うように動かない首を不思議に感じながら周りを見遣り、ゆっくりと起き上がる。  状況が掴めない。  俺は一体、何をやっていた? 『指添(さしぞえ)としての奮闘を称え、そなたに新たなる人生を授ける』  そう言った人物は、少女だった。その小さな足には、古風な型の靴がある。  ゴクリと唾を飲み込み、口内の渇きを紛らわしながら、俺は口を開いた。  自然、声音は低くなる。 「茜君(あかねぎみ)であらせられるか」 『いかにも』 「新しい人生とは、一体」 『指添(さしぞえ)は、主にその身を捧げる。その報酬として、主から命を譲り渡されるのだ』 「そんなこと、俺は望んでなど……いや、梅宮は、今、何処に……」 『明は、死んだ。指添(さしぞえ)に命を譲るには、自らの命は断たねばならぬ』 「そんなっ、梅宮がっ?! 今っ何処にいらっしゃるんだっっ!」     
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