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『明の指添よ。今、すべてから解放された。その目を開くが良い』
唐突に、知らぬ声が響いた。
声どころか、音を聞くのが久し振りだ。鼓膜の震えが心地よい。
体全体のだるさを感じながら、声に導かれるまま、瞼を開ける。
知らない部屋だった。
思うように動かない首を不思議に感じながら周りを見遣り、ゆっくりと起き上がる。
状況が掴めない。
俺は一体、何をやっていた?
『指添としての奮闘を称え、そなたに新たなる人生を授ける』
そう言った人物は、少女だった。その小さな足には、古風な型の靴がある。
ゴクリと唾を飲み込み、口内の渇きを紛らわしながら、俺は口を開いた。
自然、声音は低くなる。
「茜君であらせられるか」
『いかにも』
「新しい人生とは、一体」
『指添は、主にその身を捧げる。その報酬として、主から命を譲り渡されるのだ』
「そんなこと、俺は望んでなど……いや、梅宮は、今、何処に……」
『明は、死んだ。指添に命を譲るには、自らの命は断たねばならぬ』
「そんなっ、梅宮がっ?! 今っ何処にいらっしゃるんだっっ!」
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