一、白き終焉

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『寺院にて、亡骸を安置してある。今、皇帝を騙った罪について査問会が開かれている。その結論を待っておるのだ』 「皇帝を、騙る?」 『明は、先王崩御後、帝の印痕が表れた藤宮をかどわかし、同じ印を自らの体に書き込んで帝と偽り、皆を欺く大罪を犯した』 「っ、そんな馬鹿なっ!! そんなわけがない!!」  俺は、走り出していた。  走るというには覚束ない足取りではあったが、とにかく渾身の力を込めて、夢中で梅宮の元へ向かった。  王族が安置される寺院と言えば1つしかない。例え罪を着せられたとしても、その高貴な身分ゆえ最大の敬意を払われている筈だった。 『皇帝になれと望んだのは、そなたであったろう』  耳元で響くその声は、神のものか。それとも慚愧の念か。  違う、そうじゃない。  まさか、そんな訳がない。  同じ言葉を繰り返しながら辿り着いたそこで、簡素な台に梅宮が横たわっていた。  死者にしか使用しない純白の衣装が、唯一彼女を守るように、薄く纏わされている。  純白の中で、彼女は、美しく微笑んでいるように見えた。  穏やかに安心しきった、無邪気な笑顔だ。  俺だけに向けられていた、あの表情だった。 第一章、終わり。
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