一、白き終焉

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 梅宮の瞳が微笑みの奥で空虚な色をしていたことも、俺ははっきり覚えている。 「わたくしには、ツヅ様が必要なのです」  私欲どころか自身そのものも自覚していなさそうな危うさを抱き、固く縮こまっていたあの小さな梅宮が、ここまで変貌して俺を求める理由は何なのか。   梅宮の言葉を聞きながら、久し振りに、かつての懐かしい姿をまざまざと思い出す。  そしてまた、俺は、真正面から今現在の梅宮を目に焼き付けた。  正直、浅はかだという評価は拭えない。  ただそれを凌駕する強さと勢いが、今の梅宮にはあった。温厚な梅宮の思わぬ激しさに、俺は王者の兆しを見た気すらした。  沸き上がってくる興奮が自分の期待を更に加速させ、高揚をどんどん膨らませる。オヤジに拾われ、彼を師と呼び始めた頃の純粋なワクワクが甦ったような感覚がある。  そしてまた、自身の熱情によってすら壊れてしまいそうな繊細可憐な梅宮を、支えたい、導きたいという気持ちも、俺の真実だった。  俺の従うべき“偶然の流れ”がここにあると、俺は今、素直に納得した。  意思を認め、覚悟を定め、決意を固めたとなれば、後は流れに身を任せるだけだ。  俺は、梅宮の御前に膝を就き、改めて頭を深く垂れた。 「御意のままに」     
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