第2話 夢

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「よっ!ヌエちゃん 久しぶりだな!」 既に初めていた神戸が飾らない笑顔でヌエコを席に招く。 「お久しぶりですね社長 どーしたんですかいきなり」 「まぁまぁ まずは飲めよ」 「いや 酒は無しで」 「そうか...医者に止められてるのか?」 「それもあるけど もう歳ですよ 昔みたいに飲めないし 仕事に差し支えるので」 「そうか 先生が二日酔いじゃカッコつかねぇもんな」 「まっ お茶ですみませんが乾杯...」「乾杯」 そこから2人はツマミをやりながら大いに盛り上がった。 話題はヌエコが入団した時からトンパチなやつだっただの 団体の貧乏話 そしてレオポンとの熱い日々 思い出話に神戸の杯も進む 異常な程に いつもはここまで飲まない人だが今日は余程飲みたいのか 既にぐでんぐでんだ。 「ちょっと社長 大丈夫ですか もうこの辺でやめたら...」 「いいじゃねぇか 飲ませてくれよ...飲まなきゃ...飲まなきゃ やってらんねぇんだ...」 空になったグラスを乱暴に置くと神戸は突如嗚咽を漏らし始める。 「すまねぇ...お前が必死に守ってくれた団体を俺は...俺は...終わらせてしまうかもしれない」 「神妖ノ門が...終わる...そんな状況なんですか?!」 「経営状況は相変わらず微々たるもんさ...でも プロレスをしてくれる奴かいなくなっちまったんだよ...」 「そんな!根津は?牛島は?蛭谷の馬鹿なんてのもいただろ」 「ヌエちゃんが知ってる世代はみんな辞めちまったよ こんな給料が少ない団体より スペ女傘下の方がいいってみんな移籍しちまったんだ...」 「あのアホ共が...長いものに巻かれやがって...」 ヌエコの顔に魔獣だった頃の怒りが宿る。しかし今の自分ではどうする事も出来ないのが歯がゆい。 「それで?俺に戻って来て欲しいってのか?まぁ今の俺でも広告塔ぐらいにはなれるってか?」 どうせそうだろうと思っていたヌエコが皮肉の混じった笑顔で神戸に詰め寄る。勿論神戸がなんと言おうとリングに上がる仕事は断るつもりだった。 「いや...そんな事頼まないよ お前の性格はよく分かってるし ウチの給料が安いのも事実だ。レスラーだって商売だ しかも長くは続けられない。少しでも稼げる所に行くのは世の常だ。」 「ただ不憫なのはうちに残ってくれた練習生達さ...」
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