第3話 レスラーへの第一歩

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「はぁ...はぁ...なんでこんな事...」 収穫された野菜がぎっしり詰め込まれた箱を幾つも持たされたイオリがぶつくさ言い始める。 「朝からハードすぎるよ...」 朝の長すぎる散歩で体力を使い果たしたミサトも覚束無い足取りで箱を運ぶ。 「オラァァァァ!!!!キリキリ働けぇーい!」 そんな2人をヌエコは後ろからせっつく。しかもその手にはイオリの倍はある箱を抱えて。 「ったくうるせぇなぁ これがプロレスの何に役立つんだ」 次の箱を持ち上げようとした時 ヌエコが飛んできておもむろにイオリの尻を撫でる! 「イオリ!そんな体勢で物持てば腰をやるぞ!お前はなまじ腕力があるからそれにしても頼る!それじゃ怪我するし 自慢のフルパワーは使えねぇ!腰を入れろ!尻を突き出せ!下半身全部の筋肉を使え!!」 「ミサトはもっと踏ん張れ!試合じゃ100㌔の人間持ち上げてウロウロしなきゃなれねぇんだ!重たい物を持って歩く感覚を掴め!」 「これは物を正確に早く 楽に持ち運ぶ訓練だ!お前らはまずは体の使い方から仕込まにゃいかん!雑に運ぶな!1回事に丁寧に 体に覚えさろよ!!」 「ほんとに効果あるのかよ...」 半信半疑でヌエコの言われた通りに足を開き 腰を落とす 「下半身全部を使うか...」 意識をハムストリングや太腿に集中させる。 尻の筋肉が伸びるのを感じる 太腿の筋肉が力を溜める。 それをベストのタイミングで稼働させ一気に立ち上がる! するとさっきまでのキツさが嘘の様にも箱が持ち上がる。 意識1つでここまで変わるのか これまで力任せに動いていた自分がいかに無駄な動きをしていたか思い知らされるイオリとミサト 一方その頃 トウカとヒカルはスコップ一丁手渡され ひたすら穴を掘っていた。 「ぜぇ...ぜぇ...キツい...」 汗だくのトウカが滅多に吐かない弱音を口にする。 「ていうか 隣りに機械あるのになんで...」 可愛らしい顔を土で汚しながらヒカルが汗を拭う。 ヌエコからの指令は 生ゴミを埋める大きな穴を掘れ ただそれだけだった。 ヒカルが指さしたバックホウは故障しているらしく それでこんな目にあっている。 ヌエコ曰く「穴掘りは全身運動だ!水泳と同じで身体中を鍛えられる 気張れよ」 「「はぁ...はぁ...はぁ」」 のどかで静かな農場にトウカとヒカルの荒い息遣いだけがこだまする。
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