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「シャラポフさん、これを見ているということは、目覚めたようだね」
とテレシコフが言った。
「騙すようなことをして、悪かった。これも社長命令なんだ」
「どういうことだ」
「ちなみに、これは自動再生だ。あなたと通信しているわけではないことをあらかじめ言っておく」
「ちっ、なんだよ、一体!」
シャラポフは事態を飲み込めず、困惑した気持ちをごまかすように大きな声で悪態をついた。
「黙っていたが、私は医師免許と博士号を持っている。このたび、長い現場研修を終え、マリューチン社の取締役兼産業医に就任した。あなたの指揮する実験に末席として参加するふりをしていたのは、すまないと思っている。しかし、これも社長命令なんだ」
シャラポフはソファに浅く座り、卓上に浮かぶ二人の小人を薄目で眺めた。
尊大なテレシコフの斜め後ろで、ジリノフスキーは、まるでボディガードのように、気をつけの姿勢で待機している。
きっと、普段はテレシコフのことを先生とでも呼んでいるのだろう。
どうやら、はめられていたのは自分だったようだ。
ただのマトリョーシカ実験だと思っていたが、騙して眠らせるということは、あまり良くない裏がありそうだ。
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