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「両親が栄養士でね。ガキのころから飯だけはちゃんとしたものを食ってきた。あんたらも、これから子供を作るなら人工細胞の食事はやめたほうがいいぜ。イワノフの甥っ子は生まれてからずっと補助人工知能を付けてるんだとよ」
「ああ、それは僕も聞いたことがあります」
テレシコフがテーブルに飲み物とつまみを並べた。
「最近よく聞く話ですよね。日本じゃあ、指に目がある赤ん坊が生まれたとか」
「アメリカが環境適応力のあるミュータントを作るために世界中で実験してるって噂もあるよね」
「しかし、ここはニュースが見られないのが難点だな」
「あと数年で、外界との通信もリスクなくできるようになるって話だけどね」
「そうなると、医療用は無人探査船が主流になっちまうな。映像さえ見られたら、事足りるからな」
「だから、娯楽用のを作るんでしょうね。社長は先読みが好きですから」
シャラポフはテレシコフが淹れたコーヒーを飲んだ。香ばしい味に喉が温まる。カフェやレストランで飲んだら付加価値税が七〇パーセントもつく自然栽培コーヒーがここでは飲み放題だ。束の間の贅沢を楽しむことにしよう、そう思った。
夕食を終えると、ジリノフスキーはソファにごろりと寝転んだ。
「暇だな。なんか映画でもやってくれねえかな」
「いいよ、なにか見るかい」
「見れるのか?」
シャラポフはソファ備え付けの端末をタッチした。照明が落ち、天井の画面がスクリーンに代わる。
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