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<起きて、起きて、朝だよ、朝だよ、レーヴェ、レーヴェ>
その声に12歳の少女は重い瞼をこじ開けた。
夢心地の意識の中、無造作にあちこち自由に跳ねている茶色の髪をがしがしと豪快にかき、目を覚ますべく天に向けて両腕を目一杯伸ばした。くあ、と大きなあくび付きで少し覚醒した彼女は、窓際で羽をパタパタと動かしている小鳥に目をやった。
<レーヴェ、レーヴェ、お腹空いた>
その小鳥の言葉に返事をするようにレーヴェのお腹も可愛らしい音を立てた。
「うん、ご飯探しに行こう」
レーヴェはきしきしと軋む木製のベッドから降りると、ベッドのほぼ真隣にある扉を開けて小屋を出た。
ベッドと、トイレしかない古びた小さな小屋。
それが、レーヴェの家。
レーヴェはボサボサ頭のまま外に出ると、手入れされた芝生の広いスペースに立ち、両手を広げた。
「みーずよ、こいこい」
レーヴェの声に答えるように、小屋の周りの木々がさわさわと揺れて木の葉から朝露が垂れレーヴェの頭上に雨の様に降り注ぐ。その滴を全身で浴びてレーヴェは雨の中をくるくると回り、舞う。
「かーぜよ、こいこい」
小屋の周りの花や草がざわざわと揺れる。
レーヴェの周りを温かい風が渦を巻くように吹いた。
その風の流れに沿うように、びしょ濡れになりぺったんこになっていた茶髪の髪はサラサラと揺れた。
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