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ヒステリック教師と言えば誰もがぴんと想像するような風貌で、遅刻魔でよく生活指導室にお世話になっている羽澄にとっては、まさに天敵のような存在なのだ。
舞台からは高杉先生、横からは和泉先生。 自分たちは完全に包囲されている。
そんなどうでも良い言葉が頭に浮かぶほど、すでに羽澄の心は退屈していた。
が、周りの生徒たちは違うようで、あちこちから「もしかしてあの先生?」「きゃーカッコいい!」などと黄色い声が上がっている。もちろんその声援の矛先にいるのは、噂の新任先生だ。
ジャージ姿の先生もいる中、赤いネクタイにぱりっとしたストライプ柄のスーツ姿は、壇上からは一番遠い自分たちの場所からも目立っていた。
耳が出るくらいのショートヘアはくねくねとうねっていて、そのヘアスタイルから勝手に頭の中では「若い頃にサーフィンしてただろ」というレッテルを貼っていた。
でも、「してましたよ」と言われても納得ができるような顔立ちはしている。
「これまたチャラそうな先生がきたなー」
拓真とは正反対だ、という思いがついついそんな言葉になって口から飛び出した。
呟き程度のつもりだったが意外と声が大きかったらしく、前に並んでいる麻耶が振り返って「そう? 私は結構好みかも」なんて聞いてもいない情報を教えてくれる。
「わかったから前向いてよ」
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