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和泉先生の標的にはなりたくないので、羽澄は慌てて麻耶の両肩を掴むと無理やり前を向かす。一体あの先生のどこが男前なのか、羽澄には理解できなかった。
「静かに! 今から始業式を始めますわよ」
再びヒステリックな声がマイクを通して聞こえたかと思うと、やっと体育館に静けさが漂い始めた。
そして高杉先生はその甲高い声でわざとらしく咳払いをすると、これまたわざとらしく「これから校長先生のありがたいお言葉を頂きます」と抑揚をつけて言った。
それを聞いた羽澄は、お言葉はいいから休みがほしい、と心の中で呟く。
「それでは、一礼!」
マイクがハウリングするのではと心配するほど、キーの高い声で高杉先生が号令を出した。それに合わせて八百人以上いる生徒たちが、各々のペースで頭を下げる。
羽澄もそんな生徒たちに合わせて、とりあえず頭を下げた。なぜか我が校では、始業式や全校集会の時は、まずこの一礼から始まるのだ。
「えーみなさん、お久しぶりです」
さっきのハウリングトーンからは打って変わり、今度は一気に眠気を誘うようなおじいちゃん声がスピーカーを通して伝わってきた。
髪だけでなく特徴的な長い眉毛と髭はどれも、白。初めてその風貌を見る人は、「どこかの長老ですか?」と聞くかもしれない。
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