忍び寄る影

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小柄で華奢な身体は、年齢のためか少し前に曲がっている。どう考えても定年をはるかに過ぎていそうなのだが、この学校の内部事情は羽澄にはよくわからなかった。  校長、と言えば学校のナンバーワンではあるが、我が校には個性豊かな先生が多いため、どうしても校長先生の影は薄い。 しかし若い頃はかなりぶいぶい言わせていたようで、そんな話しを翔子から聞いたことがある。 「夏休みはいかがお過ごしだったでしょうかな?」  まるで孫に語りかけるような口調で校長先生は話しを始めた。  いつもの決まり文句から始まり、季節の話し、高校生らしい生活についての話し、二学期の話しなど……。 お経のような変わり映えしない話しを聞きながら、羽澄は睡魔というモンスターと戦っていた。  ごほんと校長が咳払いすれば、こくんと羽澄の首が落ちる。  このままではマズいと思いながらも、今度はかくんと膝が落ちそうになって、羽澄は慌てて姿勢を正した。 ちょうどそのタイミングで校長先生の話しが終わり、周りではまったく心の込もっていない拍手の音が鳴り響いている。羽澄は自分の眠気を覚ます意味も込めて、同じように両手を叩いた。  よぼよぼとした足取りで校長先生がスタンドマイクから離れると、今度は再び高杉先生が前に出てきた。     
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