忍び寄る影

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「続いては、今学期から新任される先生のご紹介です。三年生の英語を担当していた細川先生が産休に入られたので、今期からは大澤先生が担当されます。それでは大澤先生、自己紹介をお願いします」  先ほどまでつまらなさそうに静まり返っていた館内に、むくむくと熱気が帯び始めた。     大澤先生と呼ばれるその人物は、堂々とした足取りでマイクのもとまで歩みよる。身長は高い。百八十センチ以上はあるだろう。まったく好みの顔ではないが、スーツ姿は映えると羽澄は思った。 「今学期より本校に着任することになりました、大澤誠一と申します。担当教科は三年生の英語ですが、学年問わずみなさんのお力になりたいと思っているので、よろしくお願いします」  そう言って大澤先生は静かにマイクを置いた。わずか二十秒足らずの自己紹介には割に合わないぐらいの盛大な拍手が送られている。 どこからともなく聞こえる「キャー!」というセリフに、ここはアイドルの舞台挨拶かと羽澄は呆れ返っていた。  熱し過ぎた会場を冷ますかのように、再び校長先生がマイクが握る。 「えー大澤先生はこれまで色んな経験をされてきて、多数の企業ともコネクションをお持ちの方です。そして今回そんな経験と大澤先生のご好意から、なんと我が校の全教室に最新型のウォーターサーバーが設置されることになりました」     
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