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おお! っと、館内に驚きと感嘆の声が上がった。今日の校長先生の話しでは一番の盛り上がりを見せている。って、別に校長先生のありがたい話しではないのだけれど……。
「ウォーターサーバーか……。出来れば全室クーラー設置とかの方が良かったな」
羽澄はそう呟くと、暇つぶしがてらスカートの裾をいじる。そんな自分とは対照的に、前も、後ろも、横からも、「大澤先生、素敵!」と黄色い声が飛び交っている。
どうやら周りにいる同級生たちにテンションを吸い取られているようで、周囲が盛り上がれば盛り上がるほど、冷静になっていく自分がいた。
(あ、でもウォーターサーバーが教室にあれば、インスタントラーメンが食べられるかも)
ふとそんな事が頭に浮かび、羽澄の新任教師に対する評価はわずかに上昇した。
「大澤先生は海外でも生活されていた経験があります。堪能な英語のスキルをお持ちなので、これを機に受験生の三年生は特に勉強に力を入れるようにお願いします」
受験勉強とはまるで異なる目的を持った生徒たちからは、「はーい!」と元気の良い返事が聞こえた。普段、校長先生の話しで返事をすることなんて無いのに、こういう時は状況が違うようだ。
「私も職員室に行って英語の勉強教えてもらおうかな」なんて麻耶が振り向き様に小声で言ってきたので、「この前英語は捨てたって言ってたじゃん」と一応釘を刺しておいた。
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