忍び寄る影

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まあ自分の場合、先生が誰であろうと英語も数学も捨てているけど……。  二学期の始まりを告げる始業式は、瞬間的な盛り上がりを見せた後に、いつも通り静まり返った雰囲気の中で終わった。 が、ぞろぞろと生徒たちが各自の教室に向かう廊下では、やはり話題はあの新任先生の話しで盛り上がっていた。 「いやー、まさかあんなに男前なんて思わなかった!」  さっきから興奮しっぱなしの明里が、隣を歩きながら言ってきた。 「そう? 私はべつに男前とは思わなかったけど」 「ほら出た。彼氏一筋発言! まああんたには確かに男前の彼氏がいるから、何も思わないのかもね」  何かあればすぐに彼氏彼氏と茶化されるのは嫌だが、拓真のことを男前と言われるのは、やはり彼女としては嬉しくもあり、むずがゆくもある。 「何やら、かなりやり手の先生のようですね」  さっきから小型手帳を見ている翔子が不意に発言した。 ちらっと見ると、その小さな手帳にはびっしりと細かく文字が刻まれている。おそらく翔子のことだ。あの小さな手帳には、触れてはいけないスキャンダルがたくさん詰まっているのだろう。 「げ、翔子もう大澤先生の情報を掴んだの?」  明里が眉毛を寄せて翔子に向かって言った。その言葉に翔子は、「ある程度は」と不敵な笑みを浮かべる。     
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