新しいスタート

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新しいスタート

「みんな夏休み中もちゃんと受験勉強やってたよね?」 和泉先生の聞き取りやすい声が教室の中に広がった。あまり耳に入れたくない言葉に、羽澄はバレない程度に頭を低くする。 「もう今日から二学期だから、受験まで時間は残ってないよ。大丈夫か?」 か? と聞きながら和泉先生の両目が教室の中をぐるっと見渡す。大丈夫とは程遠い場所にいる羽澄は、目が合う前に視線を窓の方へと逸らした。 「飯田もちゃんと勉強してたのか?」 ぎくっと頭の中で警告音が鳴る。おかしい。なぜ自分の方にミサイルが飛んできた? 「はーい」と消えてしまいそうな声で羽澄は返事をすると、わざとらしくにこっと笑った。   あまり自分の笑顔には効果がないのか、和泉先生が目を細めている。そのまま視線を逸らそうとしたら、「あと校長先生の話しを聞きながら寝ないように」と釘を刺された。バレてたか……。 要らぬところで教室中の笑いを取ってしまい、羽澄は罰が悪そうに頭を下げる。なかなか幸先の良い二学期のスタートだ、と心の中で毒づいた。 「二学期は特に受験に関わってくる時期だから、みんなしっかりと勉強するように。それと、行事も色々とあるから説明しとくよ」     
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