忍び寄る影

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「沙織は生徒議会があるから先に行ってるよ」  そうだった、と今度は自分で軽く頭を叩く。それを見て、「まったくあんたは……」と明里がため息まじりに肩を落とした。  初芝女子高校ではこの時期になると、生徒主導で行う生徒議会なるものがある。これは、生徒たちが学校方針について一つテーマを決めて、それについて改善や新しいことに取り組むというものだ。  生徒議会は主に生徒会が中心で行っていて、沙織もそれに所属している。そして生徒議会が始まる二学期では始業式に生徒会長の挨拶もあり、その会長が沙織なのだ。 「沙織も大変だなー」  ふわぁと欠伸をしながら羽澄が言うと、「あんたが言うとまったく実感伝わんないよ」と  すかさず隣から明里の突っ込みが入った。 「今年は何がテーマになるのかな」  少し楽しみなのか、結衣が嬉しそうな口調で言った。 「まあどんなテーマになったとしても、去年ほどは盛り上がらないでしょ」 「おそらく、そうでしょうね」  明里の言葉に翔子も同意する。あれは奇跡でしたからね、と付け加えた翔子は眼鏡をくいっと上げた。そしてレンズ越しに、意味深長な視線を羽澄に送る。 「いやー、あれにはまいったよ」     
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