忍び寄る影

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 昨年の生徒議会で、初芝女子高校始まって以来の奇跡を起こした張本人は、照れ隠しするように頭を掻いた。 そして口を開いて喋りだそうとした時、突然前方から声が聞こえてきた。 「あ! 飯田先輩、おはようございます!」 挨拶の主を見てみると、羽澄がまったく面識のない生徒が目の前で手を振っている。上履きの色が違うところを見ると、どうやら二年生のようだ。 そして「え、飯田先輩?」という言葉を合図に、次々と前方にいる二年生たちが振り返ってくる。目の前から送られてくるたくさんの羨望の眼差しに、羽澄は慌てて首を横に向けて視線を逸らした。 「一躍有名人じゃん、羽澄」 にやにやとした顔の明里が、肘で羽澄の腕を突いた。 「いやー、別にそんなの望んでないんですけど……」  羽澄はため息まじりに困ったように呟く。 「でも、ほとんどの生徒が羽澄ちゃんのこと知ってると思うよ」 結衣が嬉しそうに両手を握りしめながら言った。それに続くかのように翔子が、「さすがうちのボスですね」と謎の褒め言葉を言ってきた。 「いやいや、知らない子から挨拶されても困るだけだから。できることなら誰かに変わってほしいよ……」     
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