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「ふはっ!?」
突然大音量でスマートフォンが鳴り出したので焦る。
どうやらメールの着信らしい。大好きなアニメ、タツマキナインのED曲だ。いつからマナーモードが切れていたのだろう。自室で良かった、と思いつつメールを開く。
『こんな時間にごめんな。今日ミーティングで聞こうと思って忘れてたこと思い出した』
送り主は、キャプテンの九条。
『単刀直入に訊くんだけど、お前から見て。俺達は優勝できると思うか?』
いつも強気な彼らしからぬ、どこか弱った言葉。何かあったのかな、と皐月は思う。九条は大企業の一人息子だ。超のつくおぼっちゃん学校に入れられそうになったのを、親を説得に説得を重ねて数宮中に入れさせて貰ったらしい。
理由は簡単。なんとそのおぼっちゃん学校にはサッカー部がなかったのである。というか、勉強一筋でほとんど部活らしい部活がなかったらしい。今時そんな時代錯誤なところがあるのか、と聞かされた時皐月は驚いたものである。
『率直に言うと。うちはディフェンスが弱いよね。というか、防衛ラインを一回あげると戻りが遅いからカウンター食らいやすい。…だから、基本的には先攻でさくっと点取って、前線でボールキープしながら逃げ切るしかないと思う。けど…まあ、わかってると思うけどそれ、カウンターサッカーの御華中相手だとかなり相性が悪いよね』
リアリストの九条だ。上部だけの慰めなど求めてはいないだろう。だから自分も、可能な限り率直な意見を伝えるのである。
『カウンター対策がどこまでできるか。守備陣の機動力の強化。正直それ次第だとしか言えないかな。オフェンス力なら、ウチは十分全国でもトップクラスだと思うよ』
『そうか。いや、いつも助かるよ。お前の指摘は本当に的確でありがたい。…まあそうだよな。うまく萬谷の速さを活かしてやりたいな。今日はちょっとパスが遅かったから。あいつならもっとタイミング速くても追い付けただろ?』
『だね。ていうか、萬谷君も九条君も本当にサッカーバカだよね。練習中じゃない時でもずっとサッカーのことばっかり考えてるでしょ?サッカー以外の趣味とかあるの?』
『失敬な!俺はサッカー以外にも好きなことあるぞ。サイクリングとか、料理とか。…まあ、萬谷は怪しいけどな。あいつはどう見たってサッカーが恋人になってるだろ…』
『ですよねー』
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