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――え、なに?なに?
原因に気付くには、少しばかり時間を要した。何故なら。
「ミーティング前に、みんなの練習メニュー配りますねぇ~」
“彼女”は当たり前のように溶け込んで、そこにいたから。その手が配っている用紙を見て、皐月ははっとして自分のバッグを見た。
そんな馬鹿な。それ以外になんて言えただろう。
昨日皐月が監督に渡されて、みんなが使いやすいようにまとめた練習メニューのプリント。朝確かに、ファイルに挟んでバッグに入れたのを覚えているのに。
なんで、彼女が持っているのか。
どうして、自分の鞄から消えているのか。
「八代さん、ありがとう。いつも八代さんの指摘は的確で本当に助かってるよ」
明るい茶髪に長い髪の、皐月には全く見覚えのない“彼女”に。九条が、まるて既知の仲であるかのように親しげに礼を言っている。
「いえいえ、どういたしましてー!マネージャーならこれくらいするのは当然ですから。ねえ?」
そして、彼女は。呆然と立ち尽くす皐月を見て、言ったのだ。
「そうは思いませんか、一ノ瀬センパイ?いつまでもそんなとこに突っ立ってないで、仕事してほしいんですけどー?」
それが、皐月と。
夢見の魔女――八代ここあとの初対面だった。
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