<第二話>

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 小学生までの頃とは違う。女子が混じっていて、本当に困るのは男子の方だとわかっている。女の子、という存在は時に悪い意味で凶器や揉め事の原因になるのだ。今さらそれをどうこう言うほど、皐月も割りきれてないわけではない。 ――まあ。女子サッカー部がない時点でしれっと諦められたってことは…私にはそこまでの情熱がなかったってことだよね…。  自分でサッカー部を作って部員を集めるだけの勇気はなかった。それなのに、やっぱりサッカーを諦めきることもできなくてマネージャーになることを決めた。――自分の行動は、非常に中途半端なものだっただろう。結果的に、過去にサッカーをやっていたおかげでみんなのデータを集めて外からアドバイスじみたこととできるわけだし、けして悪いことばかりではないのだが。  いつも、思う。  自分はなんでもかんでも“まあいいか”で終わらせすぎていると。――強く決意して、自分の意思で棘の道を選べたことなど一度もない。諦めて、気がつけば楽な方楽な方に流れてしまっている。――そんなことでは、いつか本当に欲しいものを取り逃して、一生後悔してしまうことも有り得るというのに。 ――みんなが、ちょっとだけ羨ましいな。  数宮中サッカー部の面々はいつもエネルギッシュだ。レギュラーもそうでない面々も、基本的にはみんな熱意をもって練習に取り組んでいる、と思う。特に、キャプテンの九条聖人。ミッドフィールダーで司令塔の彼は、とにかく皆のモチベーションに火をつけるのが上手い。去年全国で御華中に負けたのがよほど悔しかったのだろう。今年こそは全国制覇と息巻いているし、それは彼だけではなかった。  みんな、たった一度しかないこの時間に魂をかけている。たかが中学の部活、なんて思っているメンバーは一人もいないだろう。サッカー部は暑苦しくて引く、なんていう心ない女子も時々いるが、そんなものは無視しておけばいい。人の目など気にせず、好きなことに全力で取り組める彼らのことが、皐月はたまらなく好きだった。――自分はそこまでのことはできないけれど。少しでも、彼らの夢の力になりたい。彼らの背中を押せる存在でありたい。それが、今の皐月にとっての夢でもあるのだ。  ただ。――側にいればいるほど。彼らほど本気で戦えてはいない気がして――少しだけ、引け目を感じてしまうのも事実ではあるのだけれど。
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