<最終話>

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  ***  魔法がかかっている人間のうち、一人でも“夢”から醒めてしまったら――その時点で、ここあの魔法は解けてしまう。  それが、ここあの使う、“世界の上書き”という術の――解除条件だった。 「ちっとは反省したかよ、ココア」  不思議な茶室で、ここあは一人の少年と向かい合っている。黒髪青目に、黒いローブを着た彼は、名前をサトヤという。魔法を使って、世界を渡る航海者達。彼らが犯罪を、世界のルールを侵さないよう見張る警察のような組織『ラストエデン』のリーダーであるのが彼だ。ここあは彼に呼び出されて、この次元の狭間の――彼らの本拠地にいるのである。  結局、ここあがあの世界でかけた魔法は解けてしまい、ここあがいた二日間はすっかりなかったことにされてしまった。というか、そもそも最初からここあは、ある程度好きなように世界を楽しんだら、きちんと“上書き”を元通りにしてから退去する予定ではいたのである。というか、そうしなければ航海者の法律に反する。異世界の人間が、その世界の人間の未来や世界そのものの行く末に大きく関わる行動をするのは絶対の禁忌なのだ。ここあには、最初から“自分がやらかした全て”の後始末をする義務があった。――今回呼び出されたのは、その後始末をうっかり放棄して世界から逃げ出そうとしたのを、サトヤに見つかってしまったためである。 「…ちゃんと、魔法は解除されたでしょ」 「魔法の解除、はそれまで起きた事件がなかったことにされるわけじゃねーんだよ。一ノ瀬皐月と八代ここあに関する記憶が元通りになっても、“上書きされていた”時のあいつらの記憶は残ったままだろーが。…あのサッカー部員達がどんだけショック受けて傷つく羽目になったと思ってんだよ。いくら一ノ瀬皐月を冷遇したからって、記憶と心いじられて洗脳されてたあいつらに罪なんかねーってのにさ。…本当に悪いと思ってたなら、普通お前がいた時間全部消して元通りにしてから帰るよな?んー?」 「だ、だって…」  そんなことを言われたって。ここあは俯く。 「なんで、あんなに上手くいかなかったのかわかんないんだもん。あたし、ちゃんといつも通りに魔法かけたのに。どうして、一ノ瀬皐月には聞かなかったんですか。あいつ、魔女でも魔術師でもなんでもない、普通の人間なんでしょ?」
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